森林のめぐみ吉野の割り箸
吉野の森林から割り箸ができるまで
割り箸と言うと、「1本の木を丸ごと切り刻んで作り、使い捨てる」と森林破壊の元凶のように言われ、そのイメージが定着しているようですが、吉野の割り箸の歴史をふり返ると「山からのめぐみである木を大切にする心から生まれたもの」であることが解ります。
吉野割り箸の歴史
明治のはじめ頃、吉野では吉野杉を使って酒樽が作られていました。その酒樽の製造過程で出る端在を「もったいない」と利用して生み出されたのが「吉野の割り箸」です。
最初に考案されたのは、丁六割箸、小判型割箸という形のものでした。続いて箸の真ん中に溝をつけた元禄小判や両口が細くなった利久型が生まれます。大正には、天削げ型割箸も考案されます。
昭和に入り機械化が進むと、桧材の割り箸が製造されるようになります。桧の元禄箸、天削げ箸、丸箸など多くの種類の量産が始まりました。
時代とともに、割箸の形にはさまざまなものが出来ましたが、吉野杉の柾目や板目が生かされていることには、いずれも変わりがありません。
山から伐採された杉桧の端材から生まれる割り箸
吉野地方では、スギやヒノキを真直ぐに成長させるために密植して苗の植林を行い、木の成長に伴って徐々に間伐をしながら残った木を大きく育てます。
間伐で山から出された原木は、太さなどに応じて用途があり、さまざまな形に製材されます。
柱や板といった建築材に使用する場合には、木の周囲を製材で切り落とし、中心部を利用します。
残った周囲の部分の端材は、木皮(こわ)と呼ばれ、これが割り箸の材料となります。
吉野割り箸の特徴
『吉野割箸』の中には、赤味が強い色のものと白っぽい色のものがあります。
木皮(こわ)を良く見ると、木の芯に近いの部分は、赤味がかっていることがわかりますが、赤い色をしたお箸はその部分から作られており「赤身の割り箸」と呼ばれています。それに対して白いお箸は「白太(しらた)の割り箸」と呼ばれます。
杉や桧の森林に入ると木々のすがすがしい香りに包まれ、疲れた身体が安らぐように感じることがあります。葉をちぎった時に漂う香りは、樹木の葉や木材部から発散される揮発性の化学物質で、この芳香のことをフィトンチッドといいます。フィトンチッドには、消臭作用・防ダニ作用・殺虫作用・抗カビ・抗菌作用があると言われています。
吉野の割り箸には、このフィトンチッドなど、杉の持つ天然成分が残っているため、製造過程で防虫・防カビ剤などを使う必要がなく、みなさまに安心して使っていただくことができます。
『吉野割箸』は、真直ぐに育てられ木目の通った吉野杉桧の端材から生まれ、木肌が美しく香りもさわやか、そして気持ちよく真直ぐに割れるのが特徴です。身近に感じる吉野の自然として「おてもと」にどうぞご利用ください。
吉野割り箸の削りくず
割り箸を製造する過程で、「木毛くず」「木綿くず」「おがくず」の他、「切れ端(木の端)」等の木くずが出来ます。そのまま捨ててしまえば産業廃棄物にすぎませんが、吉野では「もったいない」の心で有効利用に工夫を重ねて来ました。
現在、「木毛くず」はスレート屋根の断熱材や木毛セメント板として、「木綿くず」は植生マットや室内装用の壁紙の原材料などとして利用されています。また、「おがくず」や「切れ端(木の端)」はお風呂の芳香剤に使用される他、各割り箸工場で、箸加工時の煮沸や乾燥の燃料として利用されています。
この分野においては、まだまだ開発・試行の余地があり、J企画ではこれから県森林技術センターと連携で推進して行きたいと考えています。